週末は隠れ家でケーキを(杉本 晶子)



女子高生の百(もも)は、双子の弟そっくりの男っぽい外見を気にしている。
ある日新しい洋菓子店を見つけるが、若い男性店主はなぜか百に冷たい。
どうやらその店は、女性客お断りの「男性限定パティスリー」らしい。
店主の小林に邪険にされながらも、店が気になる百。
百は、小さい頃母親が自分だけに作った「おいしくないバースデーケーキ」のことがひっかかっていて…。



私の好きな小説のジャンルに、「お仕事小説」があります。
その中でも好きな職業は、出版社や本屋さんを舞台とした、本に関わる仕事。
そして、パティシエやショコラティエ、和菓子屋さんなどの菓子職人系です。
今回の小説も舞台はパティスリー。
読んでいてとてもわくわくしましたw

主人公の百は女子高生。
出だしは春になって、少し今までとはイメージを変えたくて訪れた美容室で、信じられないくらい髪を短くカットされてしまうところから。
元々男顔に加え、双子の弟がいる百。
しかも弟は地元じゃちょっとした有名人であることから、落ち込みが更に増すのです。
私も数年前、美容師さんと意思疎通がうまくいかず、相当カットされたトラウマがあるので、もうこの出だしで百に共感しまくりです(笑)
あれって本当に筆舌尽くしがたいショックなんですよね…。

落ち込んだ帰り道、百は足を怪我した小林さんと店先で出会い、ちょっとした手伝いをします。
そこでお礼にと貰ったのがクッキー。
その美味しさに、翌日お礼に再訪したところ、女子であることが分かり邪険にされます。
どうも小林さんは女嫌いのよう。
そんな時お店の常連客と出くわし、そこが「男性限定」のパティスリーであること、更に個人の事情に合わせたケーキを作ってくれるお店であることを知るのです。
そこで百は小林さんの怪我が治るまでのアルバイト志願をし、更に自身の気になるケーキの再現をお願いするのです。

百の記憶にひっかかっているケーキ。
それは母親が焼いてくれる白いケーキでした。
双子なのですが、何故か百と弟のケーキは別で、百のケーキのみ、スポンジも白くパサついたものだったのです。
ひょんな時に弟のケーキを食べたところ、自分のものとは全く違う美味しさに驚き、もしかしたら自分は嫌われているのでは…という疑惑すら抱く。
なんせ弟は近所でも評判の美少年、そして書道で抜群の成績を修める出来の良い子なのです。
ケーキは母親の手作りであることから、小林さんに再現をお願いし、わだかまりを解きたい。
百の必死の説得と脅迫(笑)に、渋々引き受ける小林さん。
そして見事に再現されたのでした。
何故百のケーキは苦くパサついていたのか。
そして6歳の誕生日になにがあったのか。

そこから垣間見える百の家庭環境が、このお話全体に散りばめられています。
キーパーソンはお父さんです。
百の家庭は両親と双子の弟の四人家族。
しかし6歳の誕生日に起きた出来事がきっかけで、百やお母さん、それとお父さんの間でボタンの掛け違いが始まります。
小林さんのケーキやアルバイトでの経験を元に、少しずつ父親に歩み寄る百。
しかし、ひとつ上手くいってもそれで全てが上手く回るようになるわけじゃなく、また次の掛け違いが起こる。
これってリアルだなあと思います。
思っていることを伝えて、ようやく意思の疎通ができたかと思えば、また別のことですれ違う。
根本的に考え方が異なるんでしょうね。
それにひとつひとつ向き合うのはエネルギーが要ります。
「あなたは優しいけど、優しくない」
ってお母さんがお父さんに言った言葉、物凄く的確だなあ…。

そしてびっくりなのが、小林さんまさかのバツイチ!
「男性限定パティスリー」には、スイーツ好き男子のための他に、小林さんの個人的事情もあったのか。。。
ヒロイン女子高生、相手役は成人男性(バツイチ)。
少女小説寄りのレーベルでこの組み合わせはなかなかないですよね。
新鮮というか斬新というか…。
思いがけない百の家庭背景と、最後の小林さんの爆弾告白の印象が強く、あまりケーキの事が印象にないのが残念といえば残念(笑)
でもこれは個人的には仕方ないかなあ。
とはいえ、最初に作った白いケーキ、「四月のスノーホワイトケーキ」とか、想像するだけでも美味しそうですがw
お値段1ピースで千円には大いにビビリますけど。
自腹ではなかなか買えないわ~…。

表紙は『俺物語!』でお馴染みアルコさんw
よく知っている絵なので、読んでいる最中も頭の中でアルコさんのイラストがくるくる想像できました。
巻末には作中登場したケーキのうち、白いケーキとバターケーキのレシピが掲載されています。
普段ケーキは混ぜて焼くだけ、というものしか作らないので、こんなに細かく手間暇かかったケーキのレシピは眩暈が…。
私の周りにも小林さんが欲しいw
この本が出て半年以上が経ちますが、続編はまだ発売されていません。
少なくとも来月まではなさそう…。
ラストに「もしかしたら女子禁制が解かれる未来はそう遠くないのかもしれない」とありますが、もし続きが出たとしても個人的にはこのまま男性限定でいて欲しいな。
作中のスイーツ好き男子のためにも、そこは譲らないで欲しいなあ。


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ラストゲーム 8(天乃 忍)



「蛍くんがダメなんじゃない。そうじゃなくて ただ私が柳を好きなの」

「好きです。…返事、もらえますか」
覚悟を決めた相馬は、九条と水族館へ。
消せない想いに気づいた九条は「答え」を出す…!
一方、遅れを取り戻すべく、九条をデートに誘った柳。
だけど恋愛指南書を手に入れた九条と、絶妙に噛み合わなくて!?
恋がおわる、恋がはじまる。こんなにも切なく、愛おしく、真っ直ぐに。



7巻の感想にて、このまま最終巻までノンストップで~とか言いながら、二ヶ月以上感想ストップ状態でした。。。
『ラストゲーム』のみに関わらず、ブログ自体がしばらく放置という…。
やっぱりどうしても、年度末と年度始めは感想を書く気になりにくいなーという、ね。
しかしその間にまたしても感想を書いている作品の続刊が出ていたりして、一人あわあわしてしまう(笑)
ま、少しずつでも書いて更新していけたらいいなあ!

以上、言い訳でした(笑)

さて、この8巻、私の記憶が確かなら、同時にドラマCD付きの特装版も発売していたんでしたよね。
そちらの表紙は柳です。
そして表紙を並べると、二人でハートマーク作っているという仕様なのです!
一瞬揺らぎますよね(笑)
並べてみたくなりますよね。
でも私はドラマCDは聞けないタイプ…。
ということで、二人のハートマークは本屋さんでチェックして、自分は九条さんバージョン(通常版)を購入しました。
中扉はその裏話w
なかなか表紙のような自然な表情が作れない九条さん。
テイク50を重ね、最初はきっとウキウキわくわくだったはずの柳ですら「帰りたい…」と疲労困憊というシーン。
さもありなんw

さて、この巻のハイライトといったらやっぱり!!
私がずーーっと待ち望んできた!
九条さんの恋心自覚きたーーー!!!

です(笑)
ああもうようやくですよ。超うれしいですw
また自覚した九条さんの可愛さよ。
そしてしっかり桃ちゃんに筋通す律儀さ。えらいなー。
このまま柳への告白…の前に(そうする気があるのかすらわからないですが)、九条さんが行うべきこと。
自分に告白してくれた相馬くんへのお返事です。
ちょうど秋祭でテーマパークのペアチケットを手に入れた二人(タイミング…!)。
相馬くんからしたら、そこで最後の思い出作りって感じでしょうか。
九条さんは最初こそ意識しまくっていた訳ですが、段々いつも通りの空気になってそして…。
相馬くん偉かったなあ!
めっちゃ頑張った!
いつも誰かの「一番」にこだわっていた相馬くん。
九条さんに初めて「好き」って言ったのが自分だったと知り、それでちょっと気持ちが浮上。
あ、それでもいいんだーっと思ってしまった自分は欲深いな(笑)
でも確かに、一番最初っていうのは、何かしら動かないと手に出来ないもの。
相馬くんがちゃんと行動した結果得たものだから、それは誇っていいよね。
九条さんには失恋してしまった訳ですが、似た者同士な女の子がすぐ近くにいるのが気になる…。
彼女とはどうなっちゃうのかなー。
彼らも幸せにはなって欲しいけど、ただあんまりすぐ切り替えて欲しくないのですが(笑)

相馬くんとお出掛けしたので、自分とも…と捨て身の作戦で九条さんを誘い出すことに成功した柳w
しかしそこで柳への恋心を自覚した九条さんが意外な作戦に出た!
桃ちゃんに焚き付けられた感ありありですが、なんと恋愛指南書を購入してしまいます!
勉強熱心さがここにも表れた九条さん、前夜まで熟読し、内容を頭に入れていざデート!
ちゃんと実践するから偉いw
しかしまあ、尽く空回り(笑)
うん、読者みーんな予想ついてましたw
しかも相手はブランクあるとはいえ、お付き合い10年の柳ですもん。
九条さんのことはある程度知っている相手です。
いつもなら様子のおかしい九条さんに「俺のこと意識してる…!」とドヤ顔しそうな柳ですが、流石に今まで何度もフラグへし折られた体験から、彼も慎重になっているよう。
タイミングの悪さが奇跡的な二人ですw
いや、それでこそラブコメであり、万歳な展開なんですが!
久しぶりに笑わせていただきましたw

改めてこの二人好きだなあと思う、見どころ満載な巻でした。
柳に関しては、やっぱり常に九条さんを気遣うところとかですね。
念願の二人でのお出かけ。
なるべくなら長ーく一緒にいたいだろうけど、九条さんは慣れない恋愛指南書の実行でいっぱいいっぱい。
その様子を見た柳は、
「体調悪い?」とか「切り上げる?」とか言っちゃうんですよー。
当たり前のことのようだけど、これが出来るって実はそんなに当たり前じゃないように思えて。
やっぱり柳っていい男なんですよね!
相馬くんに対してはアレだけど(笑)
九条さんも、相馬くんへの言葉かけがすごく良かった。
冒頭で引用した台詞です。
告白の返事をした九条さんに、相馬くんが「やっぱり俺じゃダメなんですね」って言った言葉に対し、
「相馬くんがダメなんじゃない」
って!
なんか個人的にはこの台詞がすごく好きで。
相馬くん同様、こういうことサラッと言っちゃう九条さんに私も「ああっ」となってしまいました(笑)
やっぱり九条さんすごいよ!!

しかし九条さん、またしてもうっかり!
なんと自宅の鍵を忘れてしまいましたー。
お母さんは夜勤で今晩は戻らず。
…ということで、なんといきなりお泊りイベントです!
(九条さん、鍵っ子生活長いんだから、お家にお母さんいようがいまいが、鍵を持ち歩く習慣はないのでしょうか…とか野暮なツッコミはしちゃいけないですね)
多分、さして進展しないだろうなーと予想はつきます(笑)
ただ、今までなら100%柳が一人空回りするんでしょうけど、なんせ今の九条さんは自覚ほやほや!
どういう風になるのか想像があまりつかない!
ノンストップとはいきませんが(他に感想書きたいのがあるので)、ゴールデンなウィーク期間中には読みたいなと思いますw


高嶺と花 6(師走 ゆき)



「助けてって言われねーと 助けらんないの?」

高嶺に突如訪れた最大のピンチ!
財閥会長の祖父に、すべての財産を取り上げられ、スーパーリッチから一転、持たざる者に!?
高嶺が押しかけてこない事を不審に思った花が様子を見に行くも、拒絶されてしまい…。
すべてを失った、素の才原高嶺に花はどう向き合うのか?
転機の第6巻!



季節は前巻に引き続きクリスマスシーズン。
イブイブの23日は、おかもん家でお好み焼きパーティ。
そしてクリスマスイブ当日…。
高嶺さんまさかのドタキャン!!
結局花はクリぼっち…ひどすぎる高嶺さん。
かと思いきや、実はサプライズでサンタコスで登場!
予想の斜め上すぎてびっくりした(笑)
「訳:プレゼントは俺」も、どう反応すればいいのやらw
…マンションの一棟の方が(こそ)
花の言った何気ないひと言を覚えていたり、不得意そうなサプライズ演出をしようとしたり(やり方は少々難アリですが)。
高嶺さんなりに、花に喜んでもらいたくてやったんだろうなあ。
花は花で、カップケーキちゃんと渡せて。
しかもよけておいた失敗作まで残さず完食…!
これは一体どう解釈すべきでしょう!?
やっぱり…。

クリスマス後には、花の友人水希とルチアーノさんのお話にも少し触れられています。
花が意外にシビアだ…。
セオリーとしては水希の恋を応援するとか、上手くいって欲しいと願うものかなーと思うのですが。
「ルチアーノさんは別次元の人」とか「(うまくいくのは)ありえなくないですか?」「不安しかない」
とか。
リアルだと、確かに上手くいくかというと難しいだろうなーと思うし、花の言葉も最もなんだけど。
まさかヒロイン自ら作中でそう言うとは思わなんだ。
まあ、それ言ったら花と高嶺さんもそうそう有り得ないんだけど(笑)
でも主役二人は上手くいって欲しいなあと思うんです。

というのも、今回鷹羽一族が一堂に会すシーンがあり。
案の定高嶺さんに対する風当たりはきっつい。
そしてその場に高嶺さんのご両親がいないのも気になる。。。
そういえば作中にご両親の登場がないのはもちろん、話題や名前すら出てきたことないよなあ。
高嶺さんの背景については、これから更に説明がなされそうかな。
というのも、今回高嶺さんに最大の試練が!
彼が今まで当たり前のように手にしていた富や肩書が奪われてしまったのです!
主犯はもちろん鷹羽会長。
高嶺さん憎しという気持ちではなく、むしろ逆境からどう立ちあがってくるか、それに期待しているように見受けられます。
鷹羽会長は身内を贔屓したり、可愛がり甘やかすタイプではなさそう。
むしろ逆に試練を与えたがるタイプのようです。
高嶺さんの叔父である鷹羽専務などは、そういう試練を与えられたことはなさそう…。
そういえば大海くんはやっぱり彼の息子でした!
その息子は父親の自分ではなく、高嶺さんを尊敬しているという皮肉…。
大海くんにはずっとこのままでいて欲しいなあ。
高嶺さんの味方は一人でも多くいて欲しい。

という意味では霧ヶ崎さんが期待通りで嬉しいw
人事部のデータベースに侵入とか、結構やってることギリギリだけど。
そういえば彼は高嶺さんのサポート役だったわけですが、高嶺さんが子会社に出向中の今、どうしているんでしょう。
元々は秘書課にいたわけだから、そこに戻ったのかなー。

今までの自分を支えるポテンシャルの全てを失い意気消沈の高嶺さん。
そうなるとやっぱりそこで喝を入れられるのは花しかいませんよね!
まさかそこで最初の出会いの「毛ほども興味ありません!」に繋がるとは。
上手いなあ。
さてそうなると、俄然二人でタッグを組んでからの逆転劇に期待が高まりますw
鷹羽会長が満足する高嶺さんの姿とは、どのような姿なのか。
高嶺さんはどう立ち向かうのか。
花はどのように支えていくのか。
今回は本編でいっぱいいっぱいだったのか、巻末おまけ漫画はなし。
その代わり(?)、各話の間にこぼれ話4コマが。
あのサンタの衣装はルチアーノさんのとこのデザイナーが作ったオーダーメイドなのか…とか。

表紙は今回花のソロ…かと思いきや、埋もれシリーズ、なんと今回は高嶺さんが降っている…!
あ、正確には低嶺さんか…。
前巻の達磨に引き続き…シュール。
法則(?)だと、来月発売の巻は買いにくい表紙かもしれない…w
高嶺さんがどうなるのか、内容にも表紙にもドキドキしつつ、来月を待ちたいと思います(笑)


ラストゲーム 7(天乃 忍)



「友達だったら お別れしないでずっと一緒にいられるもん…」

相馬は告白に動揺する九条を誘い、夏祭りへ。
九条といい雰囲気だと調子に乗っていた柳は、デートを目撃し大ショック…で尾行!!
「嫌だよ、九条とこのままずっと友達なんて」
それぞれの秘めた想いがさらけ出される中、九条がついに――!!?



ひっさびさの『ラストゲーム』です!
もう完結しちゃいましたね…私が感想を書かないうちに。。。
うーん。
まあダラダラせずに潔く〆るのは好感持てます…。
ということで、その分7巻から最終巻の11巻まではノンストップで読み切っていこうかと思います!

で、7巻を読む前に…と思って既刊の1~6巻を久しぶりに読み返してみたわけですが。
まあ、キラッキラしていましたね!(笑)
こんな大学生活送ってみたかったー! っていうキラキラw
居心地のいいサークルがあって、気心の知れた友達がいて、その中で恋なんかもして、合宿だのお誕生日会だのイベント感満載で。
勉強もしてバイトもして、恋もする(九条さんの自覚はないけど)。
高校時代に憧れた大学生生活そのものでは!?(笑)

いやいや、久しぶりに読んで、やっぱり面白いなーと再認識したのでした。
そしてやっぱり柳は残念なくらいが丁度いいな、と再確認(笑)

前巻から、九条さんの柳への態度がぎこちない。
その理由が本人は分かっていませんが、柳からすると、大分自分を意識しているのではないかと推察され…!
…で、初っ端調子に乗ってしまうのですが、そこから話は一転!
なんと、相馬くんが九条さんに告白しちゃいましたーーー!
今まで恋愛に絡んだことがない九条さん。
もちろん告白したこともされたこともない、未経験ジャンル。
そこにいきなり(九条さん的には)の相馬くんの告白は青天の霹靂ですよね。
一気に相馬くんを意識しちゃいます。
…まあ、柳の高くなっていた鼻もポッキリ折れてしまいますよね(笑)
柳がずっと調子に乗ったままではいさせてくれないこのシリーズ。
読者の期待する主人公の扱いがわかってますよねーw

とまあ、相馬くんが一歩動いたわけですが、それに対し九条さんはというと、当然相馬くんを意識しぎくしゃく。
しかし、要所要所で柳の顔が浮かんでくるわけですよ!!
そうすると、柳との関係までぎくしゃくしだして…。
まあ、柳のことに関しては自業自得と気の毒とが混じるわけですが。
流石に
「柳はずっと友達だよね?」
は、彼にはキツいよねえ。
しかも、相馬くんが告白したって知っちゃった後だもん。
でも、九条さんのぐるぐるっぷりを見ていると、やっぱり「柳ーーーっ」って思っちゃいます。

この三人が九条さんを中心にぎくしゃくしている訳ですが、この作品の面白さは、柳と相馬くん、男子二人の関係性もあるのかな、と思います。
柳と相馬くん、ただ単に九条さんを巡る恋のライバル、というだけじゃないんですよね。
ただの同性の先輩・後輩でもあり、互いに異なる環境で育ったがゆえに、刺激し合える存在でもあるわけで。
「ヒロインを介さない何らかの関係性」というのが作者の天乃先生の言葉。
友情ともちょっと違う。
恋だけじゃなく、人としても、ライバル関係、なんだろうなあ。
人は誰からも多少の影響は受けると思うのですが、本人が意識してその良さを取り入れようとする人はそう多くはないはず。
柳にとっては、九条さんも相馬くんもそれに当てはまる“特別”な人たちなんでしょうね。

で、肝心の九条さんの起爆剤になったのは、やっぱり柳に恋している立場の橘さん。
とうとう九条さんの本音を引き出しました。
それが
「友達だったらずっと一緒にいられる」
という結論。
何故かというと…まあ、柳の全力で墓穴掘りまくった結果なんですよね…。
九条さんへの恋心を自覚したくないあまり、彼女を作っては見せびらかしていた過去。
更に九条さん
「だって私地味だしださいしブスだし暗いし」(2巻より)
って柳に言われていますからね。
自分と正反対の女の子が好みなんだって思ってもおかしくない。
フラレて気まずくなるくらいなら、友達のままでいい。
そう思ってしまうのは仕方ないのかな、と個人的には思います。
けど、柳の気持ちを察している橘さんからしたら…まあ許せないのも分かる。
自虐的ではあるけれど、好きな人には報われて欲しいし、背中押したくもなる。
うだうだしているのが、じれったくもあるし(笑)

自覚はもう目の前!
流石にここで足踏みはしないで欲しいなあ~。。。
九条さん、がんばれ!


タルト・タタンの夢(近藤 史恵)



商店街の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。
シェフ三舟の料理は、気取らない、本当にフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。
そんな彼が、客たちの巻き込まれた事件や不可解な出来事の謎をあざやかに解く。
常連の西田さんが体調を崩したわけは?
フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか?
絶品料理の数々と極上のミステリをどうぞ!



近藤史恵さんといったら、シリーズものを多数手掛ける作家さん。
全てを読んでいる訳ではありませんが、お気に入りがいくつかあって、感想を書いているプロの清掃人・キリコちゃんシリーズとか、江戸時代の同心・玉島千蔭の猿若町捕物帳シリーズ。
そしてこの、ビストロ・パ・マルのシリーズ。

久しぶりに再読してびっくり。
実にお話の三分の一くらいが料理の説明なのでは? というくらい、料理の描写がびっしり。
普段外食といったらイタリアンやご飯ものにどうしてもいきがちで、フレンチなんて数えるほどしか食べたことがなく馴染みが薄いのですが、描写がとても細やかで美味しそう。。。
鴨好きなので、三舟シェフのつくる鴨のコンフィとか食べてみたいー!
タルト・オ・ショコラも美味しそうw
美味しそうな料理は、読んでいるだけで楽しくなります。

そんな美味しそうなお料理の数々が作り出される舞台が、ビストロ・パ・マル。
テーブル席が5つ、カウンター7席という小さなレストランです。
従業員も少なく、三舟シェフ、スーシェフの志村さん。紅一点・ソムリエールの金子さん。そして語り手であるギャルソンの高築くんの4名。
毎回ゲストが出て来るものの、基本メンバーが少ないので覚えやすいのがいいです(笑)
それと、意外なほど4人の個性が結構ハッキリしているな、と感じます。
というのも、前述の通り舞台はビストロ・パ・マル。
レストランで、お客さんが世間話のように謎を持ちこむというのがこのお話の基本スタイルです。
なので、4人は仕事中。
ほぼその描写なので、プライベートの様子が全く出てきません。
語り手である高築くんのことですら、ほぼ知りえない。
せいぜい20代前半、大学出で彼女がいないらしいということくらいでしょうか。
パ・マルには自転車で通勤しているようですが、家族と暮らしているのか一人暮らしなのかも不明。
最初のお話、表題作の「タルト・タタンの夢」にて、パ・マルで働き始めて2ヶ月という記述があります。
しかし、どういうきっかけや経緯でパ・マルに勤めるようになったのか、そういう事には全く触れられていません。
とはいえ、ギャルソンというフロア全体のお世話係という仕事柄か、彼の目を通して見た他のスタッフは個性豊かに感じられます。
紅一点の金子さんは、20代後半、ワインが好きでOLからソムリエに転職し、パ・マルに勤めるようになった。
そして何より彼女のキャラとして語られるべきは、趣味が俳句ということでしょう。
商店街の俳句同好会にも参加していて、商店街のおじいちゃん達に可愛がられている、パ・マルきっての社交家なのです。
お客の飲み残しのワインをほくほく顔で試飲する姿もイキイキしていますw
いくらソムリエとはいえ、高いワインは自腹でそうそう購入できないので、こういう飲み残しから勉強をする、という理由にはなるほど。
案外スーシェフの志村さんが、一番プライベートが見える人かもしれません。
「ガレット・デ・ロワの秘密」では、彼の奥さんとのなれ初めに近いお話が語られるのです。
志村さんの奥さんは、麻美さんというシャンソン歌手をしている美人。
ソムリエの金子さんにシャトー・マルゴーに例えられています。おお、高そう。
自分のことを積極的に話すタイプではなさそうな志村さんですが、奥さんとその馴れ初めを知ると、それだけでなんだかとても彼の事を知ったような気になります。
そしてパ・マルの名探偵で料理長の三舟シェフ。
フランスでも田舎の地方で料理修行をしてきたという変わり者。
長く伸ばした髪を後ろでひとつに括り、無精ヒゲを生やしたりと、見掛けはおよそ料理人らしからぬ風貌。
しかし、一癖二癖もある常連客の舌を唸らせる料理の腕を持つ人物なのです。
最年長でもありますし(とはいえ、30代半ばのようなのですが)、修業時代も含め、過去の引き出しが一番多そうなのもシェフなんですよね。

キャラのプライベートを殆ど描かずとも、仕事の描写だけでもその人の人柄が分かる。
それって結構すごいことなのでは?
個人的にはすっかり彼らに愛着を持っていますw
毎回料理に絡む謎がお客から寄せられるのですが、私のお気に入りは最後の「割り切れないチョコレート」です。
キーは素数とチョコレート。
私の大好きなものの詰め合わせのようw
そして色んな種類の優しさが詰まったお話で、美味しいチョコを食べた時のような満足感が読後にあります。
パ・マルとの繋がりもできたし、彼の再登場のお話なんかも読んでみたいなあ。

毎回美味しそうなお料理が出て来るのは書きましたが、お料理の他によく登場するのが、三舟シェフ特製のヴァン・ショー。
ホットワインにオレンジの輪切りやシナモンなどを加えた飲み物です。
料理を堪能して、お客が謎を語る時などによく登場しています。
ワインといったら冷やしたものをいただくことが多いのですが、今の季節などにはぴったりな飲み物。
スパイス控え目なものを是非三舟シェフに作って欲しい!
最近新刊が発売され、シリーズは3作になりました。
次の2作目がこのヴァン・ショーの名を宿しているのです。
『ヴァン・ショーをあなたに』。
一体“あなた”とは誰のことなのか?
読んだのは大分前のことなので、次はこのシリーズの再読もしたくなります。
うーん、キリコちゃんシリーズの最終巻もまだなのに。
今年も近藤史恵さんの作品から目が離せませんw


     
プロフィール

sui

Author:sui
いらっしゃいませ。こちらのブログは管理人のマメでない性格ゆえ、更新はゆっくりめです。
感想は多分にネタバレを含みますので、未読の作品に関してはご注意ください。
思い出した時にでもお立ち寄りくだされば嬉しいです。


コメントやトラックバックなども大変嬉しく、歓迎です。
が、こちらの判断により、削除してしまう場合もあります(例:初めましての間柄でトラックバックのみを行うなど)ので、ご了承ください。

日記、始めました。
『のんびりたまに雑記。』リンクから行けます。
今読んでいる本などちょこちょこ書いていく予定です。
また、web拍手でいただいたコメントも、こちらの方でお返事させていただきます。

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