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ふたりの距離の概算(米澤 穂信)

ふたりの距離の概算ふたりの距離の概算
(2010/06/26)
米澤 穂信



「仲のいいひと見てるのが一番幸せなんです。それは本当。だからね、先輩。この二ヶ月、あたしけっこう、救われていたんだと思う」


二年生に進級した古典部員。
その古典部に新入部員がやってきた。大日向友子。
彼らと大日向はうまくやっていたはず、だった。
しかし、本入部直前、大日向は突然入部を取りやめると言ってきたのだ。
理由が分からず困惑する部員たち。
奉太郎は本入部締切日のマラソン大会の最中、その理由を思案する。



角川の文芸誌「野性時代」に六回に渡って連載されたものに、加筆した今作。
各々の感想は、雑誌連載時に書きました。
以下、私の頓珍漢な迷推理(・・・に、すらなっていませんが。。。)の感想です。

ふたりの距離の概算 第1回
ふたりの距離の概算 第2回
ふたりの距離の概算 第3回
ふたりの距離の概算 第4回
ふたりの距離の概算 第5回
ふたりの距離の概算 第6回


ということで、基本的には各回で書いてしまっていますので、どちらかというと今回は加筆部分について書きたいと思います。

私は本にまとまる時、前後・・・どちらかというと後ろに書き足し部分があるのではないか・・・と期待していました。
たとえば、マラソン大会終了後に、大日向が何かアクションを起こすのではないか。
たとえば、古典部の四名がそこで揃うのではないか、とか。
しかし、本作の基本の流れは雑誌連載のまま。
細かく間に書き足しがなされている状態でしたね。
連載の時は字数が決まっているから、カットされた部分かもしれません。
細かい加筆はあるものの・・・実際本になると・・・薄い、ですね。
値段はこれまでとさほど違いはないのですが、『遠まわりする雛』などと比べると明らかに薄くなっています(笑)
うーん、これは。これは・・・。
米澤さんの知名度が増した・・・ということで、喜んでも良いのかな(笑)

表紙に関しては、やっぱり今回は不満です(笑)
古典部に関しては・・・イラスト、というものは不必要じゃないかなあ。
・・・最初の古典部の文庫にはイラストが入っていましたし、「野性時代」に漫画が載ったこともあります。
けど、基本的に今の刊行の仕方でそういうのを挟んでこなかった間に、読者はそれぞれ程度の差はあれ、自分の“キャラクター像”みたいなものを持っていたと思うのです。
それを急に違った形で目の前に突きつけられると・・・。
版形は少し異なりましたが、装丁のイメージ自体は一貫していたわけですし、“古典部”はそれで貫いて欲しかったです。


前置きが長くなりました。
加筆部分についてですが・・・

細かいところは色々、見ていると違いますが、一番大きい加筆があったのは第3話かもしれません。

雑誌では、誰も奉太郎の家に一度も来たことがない・・・ということになっていましたが、千反田が一度は来たことがある、という風に直されていました。
ただ、正確にはあの時(『愚者のエンドロール』)には折木家に直接来たのではない、という風になっていましたね。
『愚者』ではちゃんとしたシーンはなかったので、これで辻褄は合いますね。
後は、後半の伏線に向けて。
奉太郎が呟いた朔太郎の詩を理解したのが、千反田から大日向に変わっていたこと。
あと、千反田が奉太郎へのお見舞いに持参したジャムについての説明が若干加わっていました。
そうかあ、流石千反田の手土産、って感じでしたね。
ちょこっとお高いジャム。
千反田は紅茶にでも入れて・・・と言っていましたが、第2回目で奉太郎が紅茶を自分で淹れてまでは飲まないことが判明しましたよね。
・・・あの時、どう思ったんだろう・・・と、ちょっと気になりました(笑)

あとは、あの招き猫。
一体どうなったのかなあと思っていたのですが、奉太郎が自分で何とかしちゃったんですね。
・・・本当に、奉太郎がケーキの蝋燭を消したんでしょうか。
なんかそんな場面、想像つくような、つかないような(笑)
招き猫の顛末が分かってすっきりです。

それに続く第4話も加筆が結構多い部分ですね。
大日向が好きなアーティストのライブツアーに、全国各地を追いかけていったことが語られています。
仙台から福岡までだって十分すごいですが。
大人になった今でも私は無理です(笑)
よくぞ、高校生で行こうと思ったし、親も許してくれたよなあ。。。
この回は大日向のイトコが開店する喫茶店のモニターの話が中心でしたが、より大日向について焦点があてられた回になっていました。
大日向のイトコが結婚していて、奥さんのお名前とか、それからお子さんが生まれること。
あと、雑誌では濁されたままだった喫茶店名とか。
名前当てに無邪気に取りくむ大日向に、私も奉太郎と同じく微笑ましく思えました。
それにしても、珈琲の部首は玉偏と言うのですか。。。
国語はそう不得意じゃなかったけれど、知りませんでした。
これを機会に覚えておかねば・・・。

あと、これは大したことじゃないのですが。
喫茶店に行き、カウンター席に座った千反田を除く四人。
喫茶店のカウンター席について「大人の階段を上ったみたい」と呟くのが大日向から伊原に変わっていました。
この行を読んだ時に何か違和感を覚えたので、雑誌で確認をしてみたら、案の定でした。
ここは・・・何故伊原になったんでしょう。
伊原と大日向なら、大日向の方が個人的にはしっくりくるような気がしたのですが。。。

あとは、伊原が大日向を呼ぶ呼称が雑誌では大体「ともちゃん」だったのが「ひなちゃん」に変更されていたこと。
それと、大日向のお家がアルバイト禁止であることなど・・・。
挙げればきりが無い細かい部分の修正が多かったかな。
結局・・・大日向は入部しない方向でまとまりそうですね。
ただ、古典部シリーズでは、入須さんや沢木口さんのような、ちょろちょろと顔を覗かせるキャラもいますから、今後全く出ないということはないかもしれません。

大日向の台詞、一番最後の呟き「いつか、許されるかな?」が、
奉太郎の「また、いつでも」(これも変わっていますね)を遮って「おだんご、ごちそうさまです」
になっていたので、大日向と“彼女”の距離は・・・開いたままなのかなあという印象です。
奉太郎も自分で思っていますけど。
真相を互いに明らかにさせたところで、結局は何も変わらない。
そんなところが、相変わらずこの作品の味で、ビターな部分なんだなあとつくづく思います。

結局古典部は新入生ゼロで、これまで通り(とは、ちょっと違うか?)活動していくんでしょうか。
里志と伊原の関係の変化が、奉太郎と千反田えるに何か作用するかな。
それ、ちょっと楽しみです。


さて。7月3日に「王様のブランチ」という情報番組のBOOKコーナーに米澤さんが出演したのですが、せっかくなので記念(?)に、その模様を少しレポしてみます。
いつも色んな方に自分が見られない番組のレポで楽しませていただいているので。
うちでどれくらいの需要があるのかは分かりませんが(笑)
・・・しかし、レポって難しいですね。
興味のある方は「続きを読む」から、どうぞ。。。

ブランチ文芸ランキングで『ふたりの距離の概算』は第3位。

ライターの方に「いつか米澤さんを紹介したいと思っていた」と。
米澤さんは、ミステリ好きの方の中では知らない人はいない・・・もし知らない人がいるとしたら損をしている。とまで。
ですが、司会の谷原章介さんは知りませんでした(笑)

紹介としては、2010年「このミステリがすごい」作家別ランキングで東野圭吾氏を抑えて作家別ランキング1位を獲得。
そして、映画版『インシテミル』の予告映像が少し。

ブランチのリポーターの女の子と、どこかの(場所は分かりません)交差点で待ち合わせ。

第一声は「こんにちは。米澤穂信と申します。今日はよろしくお願い致します」
と、ものすごく丁寧。
むしろ、ブログなどで目にする文章そのままの話し口といったところ。
ブランチの女の子もびっくりしていました(笑)
ていうか・・・そう言われた時の笑い声が高くってちょっとどきどきしました(笑)

ナレーションで「今年、大ブレイクを果たした」って言ってました。。。
・・・何で!?
と突っ込んでも宜しいでしょうか(笑)
『ふたりの距離の概算』からって意味だとしたら、異議を唱えたいのですが(笑)

米澤さんへのインタビューの前に、『ふたりの距離の概算』のイメージ映像が。
奉太郎と千反田えると大日向の三人が出てきました。
・・・あえて、この映像には触れますまい(笑)
結構賛否両論あるかと・・・。

インタビューは米澤さんの仕事部屋で。
・・・ああ、ここが例の騒音喧しいお部屋・・・と思いながらの視聴。
本棚がもっとあふれている感じかと思いきや、文庫収納ケース(ですかね?)らしきものが後ろにずらっとあります。
いくつかは米澤さんの著作が前面に出ているのは、さり気ない宣伝でしょうか(笑)
それとも、もともとかなあ。

ミステリを書いているけれど、作品は“殺人が起きないミステリ”という作風である・・・ということ。
(古典部とか、小市民シリーズに限定しての質問でしょうね)

―よく言われますが、“青春”というのをひとつのテーマにおいてますから。
 乗り越えるための問題があれば、それで物語は動いていく

“殺人”が起きないメリット

―“殺人”が起こると、どうしても登場人物の目は殺人事件に向く。
 けれど、“殺人”が起きなければ、普段の心情を描きつつ、ミステリを描くことができる

(米澤さんのスタイルとして)自身の日常から、ミステリ的な瞬間を見つけ、それを作品に取り入れることが多い
例としては

―バスに乗っていたけれど、混んでいて自分も座りたいと思った。
 目の前に座っている二人のお客のうち、どちらが先に降りるかを、荷物や服装から推理したことがある

ちなみに、このストーリーは『秋期限定栗きんとん事件』にて描かれています。
(ちゃんと本の紹介も有)

この部屋で“日常の謎”を作ることは出来ますか?
とのリポーターの問いに、4つのリモコンを出す米澤さん。
リモコンを「リモートコントローラー」と省略せずに言い、「久々に聞きました」と言われる(笑)
この4つのリモコンの中からテレビを点けてください、と出題。
迷わずにひとつのリモコンを使いテレビを点けたら、この人は一度この部屋に入り、テレビを点けたことがあるんだな、と分かる。

このネタは、今回紹介されている『ふたりの距離の概算』の招き猫リモコンで描かれていますね。

インタビューの他に、米澤さんお気に入りの本屋さんを紹介。
米澤さんが選んだ本屋さんは吉祥寺にある「百年」という本屋さん。
新刊から古本まで幅広く扱うセレクトショップなんだそう。
ここで米澤さんが気になった本として、大坪砂男の全集「天狗」「零人」を紹介。
特に、収録作「三月十三日午前二時」という作品がお気に入りなんだそう。

トリックだけでなく、人間の思いを大事にする米澤作品にも通じているようです
と、ナレーション。
・・・分かるような、分からないような(笑)

最後の質問。
青春ミステリで大事にしていることは?

―時計の針を止めない、ということを大事にしているつもりです。
 彼らは、こういう経験を経て成長していき、変化していっているんだ、というのをミステリという形とはいえ、大事にしているつもりです。


ブランチメンバーの米澤さんの印象は「ものすごく丁寧」に終始していそうでした(笑)
ライターさんが米澤作品を一言で表した言葉は「日常はワンダー 青春はビター」
日常の謎のミステリとして、非常に完成度も高く、青春ミステリと言われているだけに思春期の繊細な感情もすごく丁寧に描かれている・・・と。

・・・やっぱり、米澤作品の魅力はそこに尽きるのかな、という印象でした。
そして、なんだかやっぱり今回も今までのような装丁であったら良かったと何度思ったか(笑)


簡略化はしていますが、大体の筋はこんな感じでした。
なんとなく、ファンには既出かな? って部分も多かったですね。
もうちょっと作品に対して突っ込んだ質問も欲しかったですが・・・流石にテレビでそれは望めませんよね。
角川が出している雑誌に「本の旅人」というのがあり、米澤さんのインタビューが載った号があるようです。
まだ手に入れられていないのですが・・・一体どうやったら手に入るんでしょう。。。
あと、私はずっと「ほのぶ」のイントネーションは平坦な「→」って感じだと思っていたのですが、番組では「ほ↑のぶ↓」な感じでした。
何はともあれ、米澤さんテレビ初(?)出演、おめでとうございました。
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