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神の守り人 帰還編(上橋菜穂子)




「ただ、どうしてもゆるせないのは――シハナや、あの子の母親までもが、よってたかって、あの子に、人殺しをしろと、そそのかしていることなんだ」
声が、低く、かすれた。
「だれかが、伝えなければ……あの子に、人を殺すことのおぞましさを……」
なにもいえずにいるタンダの腕を、バルサはにぎった。
「いつになっても、おだやかな日々に安らぐことができない闇が、そのさきには待っているんだと……」
肩に、うつむいて額をあずけれいるバルサにはみなかったが、タンダの目からは、涙が流れおちていた。


南北の対立を抱えるロタ王国。
対立する氏族をまとめ改革を進めるために、怖ろしい〈力〉を秘めたアスラには大きな利用価値があった。
異界から流れくる〈畏ろしき神〉とタルの民の秘密とは?
そして王家と〈猟犬〉たちとの古き盟約とは?
自分の〈力〉を怖れながらも残酷な神へと近づいていくアスラの心と身体を、ついに〈猟犬〉の罠にはまったバルサは救えるのか?


先が気になって、下巻の帰還編も一気読みでした。
はあ、と溜め息が出る作品です。

アスラの運命に重ねられる、バルサのこれまで。
過酷な荷を背負わされた彼女たちのこれからに、思いを馳せずにはいられません。

その身にタルハマヤを宿したアスラ。
彼女の周りには、シハナを先頭にこれまで不当な扱いを受けてきたタルの民たちの期待があった。
日本や他国を見てもわかるように、民族や人種差別の問題は根深くあります。
生まれた時からの“刷り込み”があるからでしょうか。

そしてアスラに重ねられる形で、バルサの運命が彼女に与えたもの、変えたものがはっきりと見えます。
カンバル王国から逃げ、追手に追われる中で繰り返された殺戮。
望む望まないの次元ではなく、生きる為には殺さなければならなかったバルサとジグロ。
しかし、一度手をかけてしまえば、その先には安らぐことができない闇が待っている。
バルサがタンダの手を取れず、そこにある安らぎに身を委ねることができないのは、その為です。
前の感想で、軽々しくバルサにはまだまだ冒険をして欲しいと書いたことが悔やまれます。
なんて浅はかだったのか…!
泣くことすら出来ずにいるバルサの替わりに、涙を流すタンダ。
本当にいい関係。
この二人が、穏やかな日々に身を委ねられる日がいつか来るのか。
その時が早く来ればいいのに、と今は思わずにはいられません。
でも本当に、バルサにタンダがいてくれてよかった…!

タルの民たちの願いに晒されたアスラ。
彼女が選んだ道は、タルハマヤを身の内に閉じ込めること。
その代償なのか、アスラは目を覚まさなくなってしまいました。
きっと、身の内で戦っているんだろうなー。
『夢の守り人』のような状態なのかな。
タンダの見立てでは、アスラの中にアスラの魂はあるようなので、何がしかのきっかけで目が覚める可能性はあります。
しかし、それが明日なのか何十年後なのか。それは分からない。
そんな状態は、特に家族のチキサには辛いよなあ。。。
でも、アスラがタルの民の願いにも、もうひとつの自分となったタルハマヤの欲望にも恐怖にも負けず、このような選択をしたのは、ひとえにバルサと出会ったからなのだと思います。
アスラにとって、自分の運命を変えた出会いだったのではないでしょうか。
バルサたちは今後もアスラやチキサの傍で見守っていくのか。
アスラは目覚めるのか。
それはまだ、分かりません。
シリーズの今後では描かれるのかなあ。。。

恐らく分かりやすく描かれていたとは思いますが、やはり王弟イーハンと恋仲にあったタルの民は、二人の母親トリーシアだったんですね。
イーハンの為を思い、姿を隠したトリーシア。
とはいえ、人の心は純度100パーセントではない。
自分がタルの民というだけで想いを遂げられないこの状況に対する不満。
そういったものが積み重なって、トリーシアを変えていった。
そのきっかけになったのが、シハナでした。
彼女の目的は一体なんなのか。
完璧なカシャル<猟犬>として君臨し、ロタ王国を影で支えることなのでしょうか。
それとも普通に表立って支配したいの?
彼女の目的が分からなくてこーわーいー。
そして今回姿を消したシハナ。
ううん、絶対再登場ありますね!
王弟イーハン。
アスラの力を己の為に使おうとしなかったところに、賢王の器が見られます。
ロタ王国は、王族自体はなんだか信頼できそう。
今後の展開でも、バルサたちの味方になってくれそうではないでしょうか。

とはいえ、ロタ王国では南部と北部の対立は何も解決していません。
それどころか、タルの民の差別問題もはっきり表面化されてしまいました。
イアヌの処刑もどうなるのか。。。
できれば、穏便に対処して欲しいところです。

調べたところによると、来年のNHK大河ファンタジーはこのお話からスタートするようですね。
キャストも既に決定済みとか。
このお話が映像ではどうなるのか、今から楽しみです。
そしてこのお話が、シリーズ全体の折り返しとなります。
壮大な物語になっていそうな『天と地の守り人』三部作の前に、『蒼路の旅人』を早く読まなくちゃ!
こちらはチャグムのお話なのかな?
今回全く出番がなかったので、『虚空の旅人』以降、彼がどんな風に過ごしていたのか、早く知りたいです。


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